ABO式血液型の判定ができるのは

A型の赤血球表面にある抗原を凝集原A,その抗体を凝集素α,B型の赤血球表面にある抗原を凝集原B,その抗体を凝集素βとする。A型の血清は凝集素βを,B型の血清は凝集素αをもっている。それは,血液検査の反応からわかる。

では,A型の人はB型の血液と出会うことがないのに,どうしてその抗体である凝集素βをもっているのだろうか。また,B型の人はA型の血液と出会うことがないのに,どうしてその抗体である凝集素αをもっているのか。これは不思議なことだ。

その答えは意外なことだった。常在菌のもつ抗原が,血液型の抗原と非常によく似ているために起こっているらしい。つまり,凝集素αは,凝集原Aの存在で産生されたのではなく,ある細菌の存在により産生されていたのである。凝集素βも同様である。これはなかなか興味深い。

ところで,これらの常在菌に暴露される前の新生児では,凝集素α,βはまだ産生されていない。したがって,抗原抗体反応による血液型判定はできないという。これもまた興味深い話だ。