いま読んでいる本から。
右側と左側にそれぞれ電球を1つずつ置く。右側の電球を点灯させ,それを消すと同時に左側の電球を点灯させる。すると,光が右側から左側に動いたように見えるらしい。
右側の電球を赤色に,左側の電球を青色にして,同じ実験をすると,赤い光が右から左に移動して,ちょうど2つの電球の中央で青色に変わり,そのまま左側に移動したように見えるという。
ここでよく考えてみよう。中央に光があるように見える段階で,まだ左の青色電球に達していないと考えるのがふつうだろう。すると,中央で光が青色に変わったように見えることから,先に青色の光があることを予測できたことになる。それはやはりおかしい。結局,右側の赤色の光と,左側の青色の光をそれぞれ認識したあとに,光の移動を再認識していることがわかる。
人の認識とは,このように書きかえが行われるものであるという。なかなかおもしろい話だ。また,説得力のある説明でもある。ほんとうにこのように認識しているか,ぜひ一度試してみたいものだ。
(「ブックガイド〈心の科学〉を読む」岩波科学ライブラリー(岩波書店)による)