科学者という仕事―独創性はどのように生まれるか (中公新書 (1843))
- 作者: 酒井邦嘉
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 新書
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さまざまな科学者のことばを紹介しながら,科学者がどのように研究に取り組んできたか,また取り組んでいるのかを語る。アインシュタイン,ニュートン,朝永振一郎,寺田寅彦など,科学者の個性が輝くとともに,科学研究とはどのような営みなのかを説いていく。
個性的な科学者たちでありながらも,ところどころで共通したもの見え隠れする。著者の考えている科学者という仕事が,それによって現れてくる。多くの科学者が登場するが,著者の考えがあればこそのまとまりだと思う。
湯川秀樹よりも朝永振一郎のことばを大きく扱っているところもわたしの好みなのかも。ノーベル賞受賞を祝って飲んで,転んで骨を折り,授賞式を欠席した朝永。「ノーベル賞をもらうのも骨が折れる」と。
知るよりわかることを重視する著者の考え方も,わたしのふだんからの思い「覚えるのではなく理解することが大切」に一致している。このようなことから,共感をもって読み進むことができた。
さらに,読んでいくうちに,科学者の仕事といっても,それほど特殊なものではないと思えてきた。創造的な仕事であれば,ここに書かれていることは生きるのではないか。科学者だけでなく,創造的な仕事をする人にとって,この本はお薦めなのかもしれない。
利根川進「何をやるかではなく,何をやらないかが大切だ」は,いろいろなことに手を出して,何もかも中途半端になっているわたしには,たいへん耳が痛いことばだ。
文章も読みやすく,内容も平易。偉大な科学者の名言集にもなっていて,話題豊富で楽しめた。近い世代(といっても10歳以上も離れている)なので,若い世代に対する思いが近いのかもしれないが,若い世代にぜひ読んでもらいたい本だと感じた。
出所が明記されており,それは読書案内にもなる。また,巻末には科学者のことばの原文が掲載されていて,英語だけは読んでみた。原典にあたることの大切さを,実際に読みながら感じとらせようとしているのか。悪くはないと思った。