40年くらい前に買ったブロッター

いつ買ったのか忘れてしまった。おそらく40年は前だと思う。インクを吸い取る紙を取り付けたもの。ブロッターというらしい。


ブロッターというと,古風なデザインのものが連想されるが,このプラスチック製で現代風のデザインが気に入って買ったことを覚えている。特に使う必要があるわけでもなく,ただただ憧れで買った。

40年,それほど使うことはなかったので,吸い取り紙はまだ一度も取り替えていないのに,この程度にしか汚れていない。吸い取り紙の予備も買ってあるので,もっと活用すればよかったのだが,何だかもったいない気がしていた。

子どもの頃によく通った近所の医院。私はよく熱を出したので,ちょくちょくお世話になった。また,心音の異常,腎臓の異常(これはリウマチ熱と同時に起こったものだった)を最初に気づいて,総合病院を紹介してくれたのもこの医院の医師だった。

その医師がカルテを万年筆で書いていた。万年筆なのにインク瓶にペン先をつけながら書く。書き味が気に入っていたのか,記念の品なのかよくわからないが,子どもながらに気になった。そして,その机の横には,木でできた古風なブロッターもあった。ペンとブロッターに憧れるきっかけは,こういう光景にあった。

その医師が今年,亡くなったらしい。90歳を超えていたと思う。最後に診察してもらったのは,就職して1,2年目だったので,すでに30年以上が過ぎている。お元気なうちに,またお会いしてお礼を言ったり,何かお話ができたらよかったのだが,亡くなったという連絡を妹から受けるまで,正直なところすっかり忘れてしまっていた。