時間の分子生物学

時間の分子生物学 (講談社現代新書)

時間の分子生物学 (講談社現代新書)

地球の生命が誕生する以前から,地球には昼と夜とがある。陽が昇って明るくなり,陽が沈んで暗くなる。昼と夜は一定周期で交互にやってくる。

昼と夜とでは,生活環境が異なるため,生物はそれを感知して生活している。実際には,夜が来る前にそのことを知ったり,あとどのくらいで夜が明けるかなど知らないと,効率よく生きてはいけない。夜が明けたからといって,急いで昼のモードに移るのではなく,夜が明ける前にその準備をする方が,より環境に適するようになる。

したがって,光を感じるだけでなく,生物自身が時を刻む時計,生物時計をもっている。わたしたちが時差ぼけで苦しむのも,生物時計をもっているからである。

光合成をする最も単純な生物であるシアノバクテリアでさえ,生物時計をもっているという。明るいときにはおもに光合成を行い,暗いときには光合成をできず,アミノ酸合成を行う。日に何度も分裂をするが,どのタイミングで分裂を行うべきかをはかっているという。

このような生物時計のしくみを,遺伝子工学の手法を使って解明する。もともとは睡眠の研究をしていた。偶然発見した遺伝子が,生物時計に関係していたことがきっかけとなって,生物時計の研究に入っていく。そして,睡眠と生物時計は深く関わっていた。