押しつぶし法で,細胞分裂を顕微鏡観察した。細胞分裂の観察は,分裂の盛んな頂端分裂組織で行う。今回はネギの種子を発芽させ,その根の先端部分を使った。
教科書などでは,細胞分裂の観察に,次のような3つの操作が説明されている。
- 細胞が変形したりしないように生命活動を停止させる操作(固定)
- 接着している細胞をばらばらにする操作(解離)
- 特定の部位に色をつけて観察しやすくする操作(染色)
そのため,酢酸につけて固定し,塩酸で煮て解離しやすくし,酢酸オルセインなどで染色したのち,指で押して解離させて観察する,といった手順が一般的だ。
今回は,染色液に塩酸を混ぜ,そこに数分浸したのち,指で押しつぶすという方法で行った。そのときの染色液や塩酸との比率,また押しつぶす前に解離させる方法などを比較・検討した。と言っても,わたしは押しつぶし法も2,3回ほどしかしたことがない。生徒レベルなので,とにかく見よう見まねでやってみた。
染色液による見え方の違いは,次のようになった。ただ,解離が不十分であったり,分裂しているところが見つけられなかったりで,単なる細胞の観察になっているものもある。ご容赦を。
メチレンブルー溶液
シッフ溶液
シッフ溶液はアセトアルデヒドで呈色するらしい。もっと長時間浸して,液から出しておくと染色するようだが,その記録はできなかった。
続いて,もっともきれいに観察できたダーリアバイオレット溶液。この方法が今回のメインのよう。やっていて思い出したのだが,数年前に地元の先生から,この方法を紹介していただき,わたし自身もやってみたことがある。動画まで撮影したはずだ。来週,会社で確認してみようと思う。
ここで観察の方法をおさらいしよう。
これがダーリアバイオレット溶液に塩酸を加えたもの。ダーリアバイオレット溶液7に対して,1mol/L塩酸が3が加えてある。これに発根した種子を浸す。浸す時間は10分くらいと言っていたが,実際にやってみると2,3分でも観察が可能だ。
取り出したら水で洗う。これも1,2分浸すと言っていたが,実際には30秒ほど洗う程度でよいようだ。
それをスライドガラスに取り出す。
少し水がついているくらいがちょうどよい。水分が少ないとプレパラートがつくりにくい。少ないからと言って,水をたらすと,水が多すぎて押しつぶすときにずれてしまう。
根の先端1mm程度を切り取り,カバーバラスをかける。カバーガラスの上から,つまようじの頭(とがっていない方)で軽く何度もつつくとこんなふうに解離してくる。
さらにろ紙をのせて,カバーガラスがずれないようにまっすぐに押しつぶす。
これでプレパラートのできあがり。これを顕微鏡にセットして観察する。
ダーリアバイオレット溶液による方法は簡単であり,しかも非常にきれいに観察できる。
なお,この方法は,雑誌「遺伝」2000年6月号(裳華房)『実験・観察のページ/体細胞分裂の観察を確実に行う簡易染色法と材料の条件(半本秀博)』を参考にしているそうだ。この資料も入手してみたい。