きょうは娘の誕生日。早いもので,もう二十歳になる。
大学時代の友人が,わが家に来ていた。午後2時過ぎごろだったか,「もしかしたら生まれるかも」と女房が。友人には帰ってもらい病院へ。歩いていけるところだが,車で行ったと思う(もう記憶があいまい)。
子どもが生まれるまで廊下の長いすに,そわそわした父親が待っている。そこに子どもの泣き声。ドラマではこうなる。そんなことをイメージして,わたしも病院で待っていた。
はじめは一緒にいたが,分娩室に入るときに分かれる。それから廊下で待っていた。でも,すぐには生まれない。消灯時間が過ぎると,病棟内には入っていけない規則らしく,病棟の外,エレベーターの前の長いすで待つ。ここでは産声は聞こえそうもない。でも,イメージ通りじっと待つ。
午前0時が過ぎ,しばらくしたところで,廊下の向こうから赤ん坊を抱いた助産婦さんがこちらにやってきた。ずっと待っているわたしを気遣って,生まれたばかりの赤ん坊を見せに来てくれた。娘との対面。小さくてしわくちゃ。でも感動。助産婦さんに感謝して,家に戻った。
あれから20年。20年がたった。
いままでは親から子へプレゼントをしていたが,きょうは娘からわたしたちへ。ちょっぴり贅沢なワインをもらった。娘は午後から友だちと会う。息子は夕方から予備校へ出かける。そのため昼食を早めにして,皆で娘の誕生日を祝う。女房が早起きして,娘のリクエストのちらし寿司をつくった。近所に住んでいるおばあちゃんにも来てもらい,娘からもらったワインで乾杯。
実は,そのワイン,娘と近所の酒屋に出かけて買ったもの。はじめはわたしが選んでいた。でも,あまりに安物のワインばかりを選ぶため,娘はわたしを見捨てて店員に相談して決めた。ワイン専用に空調された区画に呼ばれて,「これでいい?」と娘。わたしに聞かれてもちょっと…。いつもスーパーで買うワインが10本くらい買えそうだ。
きょうは特別。特別だったんだ。
世の中には,高級なワインはいくらでもある。でも,ほんのわずかに贅沢なそのワイン,限定6本のワインは,わたしたちにとって,特別で唯一のワインになった。
午前中から飲んだからか,グラス一杯で眠くなり,そのままわたしは眠ってしまった。静かな自室で,階下からの家族の声を聞きながら。窓からはいるさわやかな風と暖かな日差し。たまにはのんびりと過ごすのもいい。