しばらく前,住民素人ディレクタの番組をつくりを特集していた。まったくの素人が,実践を通しながら,少しずつ学びながら番組をつくる。その地域の住民だからできる,地元に密着した番組に仕上げていく。
プロのディレクタが協力する。でも,細かな指導はしないという。その方が,予想もしないよい面が生まれる。素人が玄人の考えもしなかったことをやってしまう。それが新鮮ですばらしい。玄人が素人から学ぶ。
昨年の11月,機会があって京都で行われた「ゲノムひろば」に出かけた。ゲノム研究者が自分の研究を素人に説明する。なかなかのにぎわいだった。まったくの素人が,最先端の研究に興味をもって質問する。その質問に,研究者たちが真面目にこたえる。
プロの研究者が素人の発想から学ぶことがあるという。行き詰まった問題に,ヒントを得ることがあればすばらしい。専門家が自分の世界を守り,他のものはそれに関心を示さない。こんなことはもう駄目だろう。素人が税金として出資しているのだから,素人だって参加する。素人にもわかるようにしなければ,研究も進められなくなる。
かといって,素人にこびるような方法で資金を集めるもの,研究をゆがめる。やはり素人も参加するのがよい。実利の研究もよし,未知の探究もよし。身近な成果としての研究,文化としての科学を,多くの人が受け入れなくては,科学に未来はない。