- 作者: 川上紳一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2003/09/17
- メディア: 新書
- 購入: 1人 クリック: 8回
- この商品を含むブログ (17件) を見る
だからこそ,著者も熱くなる。推敲されてないと思われる文章の熱さが,興味をもつもののロマンをかき立て,ともに熱くなるのだろう。
でも,わたしは違う。このような内容にロマンを感じる人がいることは認める。また,このような科学が大切であるとも思っている。ただ,ふつうの人にも素直に読める内容にして欲しかった。この著者だけでなく,地球科学の本には,このような「熱い語り」が多いように感じるのはわたしだけだろうか。
科学的内容の説明にポイントをおき,冷静であることを心がけて書いて欲しいと思う。いや,わたしが熱くなってきた。地球科学にも,冷静ですばらしい文章を書く人が多くいることも補っておこう。
さて,数億年前に,地球全体が凍結しようが,いまの生活が変わるわけではない。しかし,それを調べる科学的手法が,さまざまな発展を生む。そこからさらに新しい発見も生まれ,最終的には,身近な技術となって,人々の生活に関わってくることもあろう。また,身近なものとはずっと関係がないこともある。それが科学だと思う。
過去の地球環境を調べることは,現在の地球環境を評価することになり,未来の地球環境を予測することにもなる。生命と地球環境は密接に関係している。人類の繁栄が地球環境を変化させるのは,過去の地球の歴史を調べれば,当たり前のことだとすぐわかる。
しかし,人類は繁栄という爆発的な変化をしながら,地球環境はそのままであって欲しいと願う。それがどれだけ無理な相談かは,地球科学を学べばよくわかるのではないか。だからどうするのか。もっと,地球科学には発展してもらわなくてはわからない。
それにしては,日本の地学教育はお粗末だ。高校での地学履修者は,生物履修者の2割以下。日本ほど地学の研究に適した環境はないというのに。大学受験に有利という理由だけでこのようになっているとしたら,その愚かさに気づくのに時間がかかりすぎてはいないか。