- 作者: 池田清彦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/02/01
- メディア: 新書
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二酸化炭素のみの対策でよいか。この点については,多くの人が疑問に思うだろう。考えてみれば,わからないことが多すぎる。対象が複雑なだけに,言われるがまま,思考停止に陥りやすい。
さらに,このような対策に利権がからんでいるとなると,簡単に結論を出せなくなる。いったい何を信じたらよいものか。
ダイオキシン問題についても,同じようなことが言える。都合のよいデータを示して,都合のよい結論を導き,素人をその気にさせることは,専門家にとってたやすいことだろう。ただ,他の専門家が,そのようなまちがいをただしてくれたとしても,今度はどちらに賛同すべきかわからなくなる。
この本には,地球温暖化問題やダイオキシン問題の他に,外来種問題と自然保護についても,ふつうに言われていることに批判的な見解が述べられている。このような批判的な意見を読むと,いままで正しいと思っていたことが揺らぐ。
いったいどちらが真実なのか。これを読んだものには,そのような悩みが生まれるのではないか。悩むのを放棄して,急いでいずれかを信じて,安心することもできよう。
しかし,このような問題に真実が存在するのだろうか。誰にもわからないから,さまざまな議論が出る。そして,そのさまざまな議論から目を背けず,つきあっていくことが必要なのではないか。
いつも言われていることと違うこのような意見にも,ときには耳を傾け,冷静に考えるときも必要だと思う。
この著者の語り口は好きになれない。世間で言われていることを,あえて逆らっているようにも感じる。無理な展開と感じることもある。やや配慮にかける物言いにも抵抗がある。もう少しうまく表現すれば,もっと立派にうつるし,影響力もあるだろうにと思うこともある。青少年向けのシリーズだけに,特にそう思う。
でも,なぜかひかれるものがあり,ときどきこの著者の本を読む。一方にふれすぎたものの見方を,あえて逆にふることで,少し冷静になることができるからだろうか。