ブレーキのかけ方

わたしの乗るバスでは,「やむを得ず急停車する場合があります。お立ちのお客様は,吊り手,握り棒などをお使いになり,事故防止にご協力ください。」のような案内がある。急停車することはまれだ。でも,バス停で止まるたびに,からだをささえるのに苦労することがある。

ブレーキの効き具合は,はじめゆるやかだが,徐々に強くなり,同じ強さでペダルを踏み続けると,最後には「カックン」と急停止する。速度こそ小さくなってからの急停止だが,この「カックン」のとき,心してからだをささえないと倒れそうになることもある。

30年ほど前,わたしは自動車学校でブレーキのかけ方を教わった。まずはやや強めに踏み込み,減速具合を確認しながら強さを調節する。徐々に踏み込む力を弱め,止まる直前でブレーキの踏み込みをさらにゆるめることで,なめらかに停止できる。停止したら,安全のためにもう一度しっかりと踏み込む。このようにすると,徐々に減速しながら,なめらかに停止できる。

しかし,わたしが乗るバスの多くは,先に書いたように「カックン」と停止する。このような初歩的な運転技術を知らないのだろうか。運転手はいつも座っているから,立っている乗客の苦労がわからないのだろうか。

これは上司に言われたり,マニュアル化して実現すべきことではない。プロとしての自覚の問題なのではないか。走っていることを忘れるほど,なめらかな発進や停止を,プロならばとことん追究してもらいたいものだ。どんなことでも,突き詰めれば奥は深いものだと思う。