マーキュロクロム液(赤チン),希ヨードチンキ(ヨーチン),ポビドンヨード液(イソジン)はいずれも消毒液。それらについて,簡単にまとめてみよう。
まずマーキュロクロム液。赤チンと言った方がなじみが深いかも。わたしの子どものころは,すり傷には赤チンと決まっていた。
マーキュロクロムは有機水銀化合物で劇薬。それをうすめたマーキュロクロム液の毒性は低いらしい。ただ,水銀中毒の危険性から,使用が控えられるようになった。また,製造過程で水銀が出る危険から,日本では製造が中止された。でも,海外で製造されたものが,いまでも日本で販売されている。上の写真のマーキュロクロム液も,昨日,薬局で買ったもの。
希ヨードチンキは,エタノールにヨウ素を溶かしたもの。ヨウ化カリウム(注)が添加してある。
希ヨードチンキに含まれるヨウ素には,強い酸化力がある。この酸化力で細菌を殺すため,希ヨードチンキは殺菌作用をもつ。
なお,生薬をエタノールに浸したものをチンキ剤という。生薬の成分をエタノールで抽出するのだろう。でも,ヨードチンキは,ヨウ素をエタノールに溶かしたものなので,厳密にはチンキ剤ではない。
希ヨードチンキをティッシュペーパーにしみ込ませた。茶色をしていることがよくわかる。
これに比べて,マーキュロクロム液は赤い。
希ヨードチンキをヨーチンと呼ぶことから,マーキュロクロム液を赤チンと呼んだ。マーキュロクロム液はもちろんチンキ剤ではない。
最後にポピドンヨード液。これはうがい薬であるイソジンが有名。
ポリビニルピロリドン(ポビドンともいう)にヨウ素を分散させたものがポビドンヨード。ヨウ素による殺菌作用がある。うがい薬だけでなく,広く消毒液として使われている。
なお,ポリビニルピロリドンはビニルピロリドンが多数結合してできた物質。ビニルピロリドン(厳密には,N-ビニル-2-ピロリドン)には発がん性があり有毒だが,それが多数結合してできた物質であるポリビニルピロリドンはからだに吸収されず無害。水に溶けにくい物質を溶解・分散させる働きがあるため,インクジェットプリンターのインクやスティック糊,切手の糊などに使われているらしい。
【注】
ヨウ素は,ヨウ化カリウムから生じるヨウ化物イオンI-と反応してI3-を生じる。したがって,ヨウ素は水にほとんど溶けないが,ヨウ化カリウム水溶液にはよく溶ける。デンプンの検出に使うヨウ素液は,ヨウ化カリウム水溶液にヨウ素を溶かしたもの。デンプンが含まれるものにヨウ素液を加えると紫色を示す(ヨウ素デンプン反応)。