- 作者: 荻上チキ
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2008/07/16
- メディア: 新書
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「学校裏サイト」に関する報道には,やや疑問を感じていた。さらに,携帯禁止の議論にも,本質を見失う危険を感じていた。本書は,それらに対して,順序立てた説明を加えてくれる。
著者自身がネットを活用する人であり,ネット擁護にかたよっているのではないかという見方もある。しかし,冷静に世の中の議論を聞けば,その疑いも消えるだろう。
ネットによるいじめは,ネットを規制すれば減るだろう。でも,それでいじめがなくなるのか。携帯サイトは出会い系という発想はあまりに幼稚だ。知らないものはこわいものという,無知をさらけ出した議論はもういらない。新しいメディアが生まれるたびに繰り返されてきた危険論。その歴史を振り返ってみることも大切だろう。
また,いまのマスコミは,新しいメディアである「ネット」の台頭を脅威に感じているはず。そのようなマスコミの言説にこそ,偏見があると疑うことも必要だろう。
ただ,いまのネットの問題を無視しているわけではない。問題点を冷静に見つめて,きちんとした解決をはかることこそ,いま求められていることなのだろう。特に,いじめの問題をネットの問題にすり替えた議論は,本質的な問題の解決を遠ざけてしまう危険がある。