「スーパーコンピューターを20万円で創る」

スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書)

スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書)

もともと好きなテーマでもあるし,何かを成し遂げる話も嫌いでない。プロジェクトXのような展開,映像を使って訴えるものは,感情的になりすぎ,何となく後味が悪い。でも,この本は気持ちよく楽しめた。
まったくの素人が,いろいろと調べながら,試行錯誤をくり返してやり遂げる。素人だからこその発想と言ってしまえば陳腐だ。やはり,それぞれの人の発想であり,個性であり,情熱である。
シンプルに考えた方がよい結果を生むことは,多くの人が知っている。しかし,何がそこでもっともシンプルな発想なのかを見抜くことが難しい。問題解決能力の高い人は,それを的確にやってのける。「テーブルをひけばいいじゃん」と言う発想などは,当たり前のことだが重要だと思う。
「…企業で行われる開発のほとんどは,成功することを前提に進められる。しかし,GRAPEの開発は違っていた。世界で誰も作ったことがなく,成功の保障もない。そう言うものに挑戦できる機会はそう多くはないはずだ。」
このように思って開発を進める著者たちを,うらやましく思う反面,自分にはできないだろうとも。あこがれだからこそ,読んでいて楽しめるのかもしれない。
「本当のチームワークとは何か?」で,たがいに実力を信じ合い,力を出し合うことを紹介している。半世紀も生きてきたが,いまだにこのようなものにあこがれるには,わたしが夢想家なのだからかも。