「他人を見下す若者たち」

他人を見下す若者たち (講談社現代新書)

他人を見下す若者たち (講談社現代新書)

話題になっていたので読んでみた。すでに情報があるので,読んでいてもそれほど新鮮さは感じられない。

単なる思いつきではなく,データを示しながら分析を試みている。ただ,そのためにかえって読みづらくなったり,わかりにくくなっているように思う。データが示してあっても,サンプルが少なかったり,集団に偏りがある。また,調査方法も開発途中のようなので,もう少し気楽に表現する方がよかったのではないかと感じた。

書かれている内容は,多くの人たちが共感するものではないか。それはデータにもとづいた研究だからではなく,日ごろの自分自身を振り返ることで,容易に共鳴できることが多いからだと思う。それらを分析的に表現したところに価値があるのだろうが,わたしにはそこが中途半端に感じられ,あまりおもしろいとは思えなかった。

最後の章では,著者の意見がある程度ストレートに書かれているようで,かえってその方が素直に読めた。わたしは,きちんとした裏付けのない思いこみを嫌い,それらに対して批判的なものの見方をしたいと願っている。にもかかわらず,このように思うのは,実証がむずかしいが,自分自身の心理と重ね合わせることで理解が容易になるという,この本の内容によるのだろう。

そこでこわいのは,安易に納得してしまうことだ。自分の都合のよいように理解して,うなずいてしまうことはなかったか。このような内容を扱う場合,そこにも注意しないといけないようだ。