
- 作者: 高橋邦典
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2003/12/01
- メディア: 大型本
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ふだんは校内で喧嘩をする生徒たちが,修学旅行では同盟を結び,他校の生徒と衝突する。戦争は,この規模がやたら大きくなったとしか思えない。
人は一人では生きていけない。だから集団をつくる。その集団が大きくなると,その集団が個性をもち,生き物のように振る舞う。その典型が国家だ。国家の存続にとって,戦争が意味をもつ。国家の利益にとって,戦争は重要になる。
でも,個人にとって,戦争は単なる殺し合いだ。何の恨みもない相手を,国家のために殺す。平和な世界で出会っていれば,よい友だちになっていたかもしれない人を,「敵」と抽象化して撃ち殺す。でも,兵士を責めるわけにはいかない。彼らは,自分が撃つか,相手に撃たれるかという状態におかれているのだから。
そのような極限状態は,想像するだけでめまいがする。
正義のための戦争なんであるのだろうか。あるとすれば,それはだれのための正義なのか。ある人にとって正義であっても,他の人には正義でないこともある。そんなことは,だれでもわかっていることだ。にもかかわらず,「正義のための戦争」が叫ばれ,そのために殺し合う。
戦争の悲惨さ,残酷さ,無意味さ,虚しさ,…を,ずっと語り継がなくてはならない。もっと想像力を働かせて感じなくてはならない。そして,そろそろ戦争をする本能を,冷静な知性で補うことを,真剣に考えようではないか。