電子書籍の衝撃

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

2010月4月17日購入

音楽がアンビエント化したように,本も変わっていく。端末の普及だけでなく,プラットフォームの構築が大切だ。「アンビエント化」については,著者のことばなのだろうか。それ以外の点は,一般によく聞くことだ。

Appleによって,音楽はアンビエント化したという。CDをプレーヤーにセットしたり,MDにダビングしたりと言った手間はなくなり,いつでもどこでも音楽が楽しめる環境。このようなものをアンビエント(環境,遍在)とよんでいるようだ。

プラットフォームの覇権を競って,AmazonAppleGoogleなどがどのように動いているか。Appleの音楽での成功,Googleのブック検索にも触れながら,現在までを解説する。雑多の情報が入っているので,興味のない人は拾い読みで十分かも。

ネットの普及により,活字を見る機会は増えており,活字離れにはなっていないとも。安直な物ばかりに走る出版社の問題点も指摘。この点は,わたしも同感だ。いろいろな本が出版されることはうれしいが,流行に走り,似通ったもの多いのには閉口する。

いずれにしても,出版社の未来はさびしい。特に,日本の状況はむずかしく,著者の攻撃も厳しい。日本では,雑誌流通のしくみに乗っかる形で,書籍流通のしくみができたらしい。また,再販制度による「ニセ金」が,出版社の自転車操業をまねいていることなども興味深い内容だ。日本の出版文化は,出版社がささえているわけではないと手厳しい。

音楽の楽しみ方が大きく変わった。いつの時代のどのようなジャンルの音楽であるかは問題ではなく,1曲ずつ自分の好みに合わせて選ぶ。アルバムではなく,曲単位で購入する。ただし,本はバラバラにはできないので,「リパッケージ」されるのではないかと。この点については終章「本の未来」を。

一部に繰り返しのような記述もあるので,急いでいる方はこの終章を読んでから,全体を読むかを判断してもよいかも。

KindleiPadソニーなど日本のメーカーがつくる端末も気になる。でも,日本ではそれほど普及していないため,その実態がよくわからない。また,これらのリーダー向けのコンテンツについても,AmazonAppleか,それともGoogleかという議論は活発だが,その意味するところがいまひとつ,わたしにはつかめていない。

Kindleを買ってみようと思ったが,日本語の本がないため,わたしには使えない。発売が遅れているiPadも,購入すべきかどうか悩ましい。また,リーダーについては,チップセットとChromeOSが一般的になれば,さまざまなメーカーから出てくる可能性がある。電子書籍のフォーマットにオープンな規格を採用すれば,いっきに広まることも想像できる。

プラットフォームの改革から新たなニッチがうまれ,さまざまなタイプの電子書籍が現れて欲しいものだ。これからの展開が,マンモスの支配する社会ではなく,多様な形が共存するものであることを祈りたい。

なお,この著者は,最近,いろいろなメディアで見かける。以前に読んだ「2011年新聞・テレビ消滅」が,やや乱造のイメージだったので,この本も買うのを一時躊躇した。でも,仕事上,電子書籍の情報が欲しくて購入。以前ほどラフだという印象はなかったが,旬を過ぎれば不要となる内容かもしれない。