売却した父の家が解体されたらしい

昨年の3月に売却した父の家。買い手は,家を解体して畑にすると聞いていた。妹の話によると,家は解体されたらしい。

9月に両親の墓参りに出かけたとき,売却した家の前まで行ってようすを見た。そのときは,まだ家はそのまま建っていたので,その後に解体したのだろう。

わたしが22歳になる年だった。大学に2年遅れて入ったので大学2年のとき,わが家はその家を買って引っ越した。母は大きな手術から3年ほど過ぎ,元気になってきたころ。近所で一人暮らしをしていた兄も家に戻り,両親,兄,妹とわたしの5人,この新しい家での生活がはじまった。

この家を購入するにあたり,わたしは大学院へは進学しないことを決めた。経済的な理由だけで進学をやめたのではない。自分の能力や素質から考えて,研究者にはなれないと思ったからだ。大学を卒業する単位を取るのは,そんなにむずかしいことではない。また,就職できないとは考えてなかったので,3年以内に,わたしにも一定の収入が入るようになる。そのように思えば,ローンを組んでも,それほどの悩みはなかった。

わたしは大学を卒業してすぐに地元の企業に就職。その翌年の初めに母が亡くなった。引っ越してしばらくして,母に別の病気があることがわかり,あまり長くはないと言われた。また大きな手術を受け,一時的には元気になったが,結局はだめだった。母が亡くなってすぐに妹の大学入試だった。そして,わたしと同じ大学に進学。そう言えば,わたしがその大学に合格したことを電話で母に伝えたとき,母が大きな声で喜んだことをいまでも覚えている。それほど感情を表さない母だったので驚いた。妹も合格したと知ったら,さぞ喜んだことだろうに。

就職して3年目が終わろうとしているとき,わたしは結婚してその家を出た。それから2,3年後に兄も結婚して家を出て,その家は,父と妹だけになった。さらに何年かして,父は70歳で引退。妹は同じ市内と言っても,まったく逆方向のところに職を得て,しばらくはその家から通ったのち家を出た。妹が週末などには,その家に戻っていたが,結局は,父は一人になった。

それから何年かが過ぎ父が入院し,そのまま家に戻ることはなかった。入院からのことは,このブログにも記録してある。

今年は引っ越しから30年目。わたしには二人の子どもができ,その二人ともに成人。わたし自身も家を買い,いまは家族四人で暮らしているが,子どもたちがいつまで家にいるのかはわからない。数年で巣立つことも考えられる。

この休みには行けなかったが,週末,余裕があるときに,両親の墓参りに行って,わが家があったところをながめてみようと思う。