「死」について

子どものころから「死」を意識することがあった。死ぬのではないかという漠然とした不安を,感じることがあった。また,ときには死に対する恐怖を感じることも。
夜寝るとき,耳を下にして枕に頭をつけると,自分の心臓の音が聞こえてくる。でも,自分の心音が聞こえると不安だった。その音が止まってしまうのではないか。意味もなくそのような不安を感じ,頭の向きを変えることも多かった。
小学生のとき,近所の同級生が亡くなった。特に親しかったわけではない。病気がちで学校にも来ていなかったのだろう。その子の葬儀が自宅であり,家を出るときに近所の人たちが見送った。その子の父親が最後に挨拶で,「先立つ親不孝の子」と言ったのがいまでも記憶に残っている。親より先に死ぬのは,親不孝なのだと,そのとき知った。
わたし自身も,小さいときから病気がちで,小学3年のときには,一時危険な状態にもなった。3か月の入院の後,幸いにも快復した。そのようなこともあったので,長生きできないのではないかと,子どもながらに思っていた。
親より先に死ぬのではないかと思っていたが,24歳で母を,49歳で父を送り,いまは51歳10か月になっている。母が亡くなったのが53歳9か月。次はこれをクリアすることか。