父が持っていたカメラで,中学2年のころから,借りて使うことがあった。距離計連動式で,ファインダーの中央部が二重像になっていて,それを一致されるとピントが合うしくみ。また,ファインダー内にフレームが映っていて,距離に応じて微調整されたのだと思う。ピントリングの操作位置はレンズの根元右下で,ボディーの左右を両手で持つと,ちょうど右手の薬指に当たり,わたしは薬指で操作した。
レンズについたリングで,絞りとシャッター速度が設定できる。どちらにもAというマークがあり,両方をAに合わせると,露出は自動になる。おそらくプログラムオートなのだろう。ファインダー内に,何らかの表示があったようにも思うが,記憶はもう曖昧だ。
レリーズボタンは非常に深く,押し込んでいくと露出がロックされ,そのあとシャッターが切れる。その後にコンパクトカメラの原型になるのだろうが,まだ大きくて重かった印象がある。中学生には高級カメラだったし,扱うときには緊張もした。
そのころ(1970年のはじめ)は,カラー写真が普及しはじめていた。フィルムや現像,焼き付けの費用は,かなり高かったと思う。わたしの記憶では,サービスサイズ1枚のプリント代が80円。フィルム2,3本を現像に出したら,その代金の高さに母は驚き,その驚きを見て,気安くシャッターが切れなくなった。
このカメラがどうなったかはよくわからないが,父が処分したように思う。