進化生物学への道―ドリトル先生から利己的遺伝子へ (グーテンベルクの森)
- 作者: 長谷川眞理子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/01/26
- メディア: 単行本
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この著者の本は何冊も読んでいる。読みやすいが内容が豊富で,いろいろと得るものがあると感じる。単に,わたしの好みの内容なだけかもしれないが,新書・文庫で新しいものが出ると,欠かさず買ってしまう。
この本は単行本で,値段も高くなる。新書・文庫のようにコストパフォーマンスは高くないが,期待通りの内容であった。
どのような本で著者が育ったかを回顧した内容で,いたって個人的なものであったりもするが,そこから話題が広がる。
内容は古くなっても,その時代の新しいものをしっかりと伝えていくこと。子どものレベルに下げることなく,詳しくしっかりとした解説が必要。そうすることで,子どもの興味や疑問を引き出すことができると言う考えには賛同する。
ただ,そのようなものが流行らないのも事実。充実したもの,興味を引き出すものに眼を向けさせるにはどうしたらよいか,著者のもう一歩突っ込んだ意見を,これからも著者の本を読みながら探ってみたい。そこのところが解決しなければ,理想だけに終わってしまう。
「群淘汰の誤り」は,わたしも気になっている。一般的には,さまざまなところで,群淘汰的な考えがはびこっている。また,「利己的な遺伝子」に関係して話題に出した「トンデモ本」への対策として,「広報活動はまじめな研究者の義務」と言っている。これからも期待したい。
著者は,自己の研究そのものを大学で教えてきたわけではない。進化学の第一線の研究者でありながら,文科系向けの自然科学の講義をしてきた。そのような経験が,著者の書く本にも現れたり,「広報活動」を大切に感じさせるのかもしれない。
「四枚カード問題」と「互恵的利他行動」,「数学的能力の進化的基盤」などは興味深い内容だった。
高校生などにもぜひ読んでもらいたい内容だからこそ,本当は岩波新書で出して欲しかった。新書3冊分の定価は,高校生には高すぎる。岩波新書も,最近はかなりかるい本を出している。斎藤孝や畑村洋太郎,香山リカの本のように読みやすく,これらの本よりも充実していると思うから。
斎藤孝や畑村洋太郎の本は,わたしには1〜2冊読めば十分という印象。香山リカの本は嫌いでないが,最近飽きてきた。ということで,比較に出してみた。わたしの個人的な印象だけ。これらの方々にはごめんなさい。