- 作者: 梅田望夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/02/07
- メディア: 新書
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現在のウェブ技術を使えば,いままでには考えられなかったコストで,独創的で便利なツールが開発できる。それを見て旧勢力は,「こらはおもちゃですから」と言う。かつて,パーソナルコンピュータに対して,当時の旧勢力が言ったように。ウェブの「あちら側」の論理で,「あちら側」に構築する新しいシステム。それらはすでに始動しはじめ,大きくなってきている。
「(≒無限大)×(≒ゼロ)=Something」という発想。ほぼ無数に存在するわずかなメリットからは,コストがかさむために利益があげられなかった。「こちら側」では,一定以上のコストは避けられず,そこから利益をあげるためには,ある程度のメリットが必要であった。しかし,「あちら側」ではコストがほぼゼロになり,ほんのわずかなメリットを,無数に集めて利益をあげることができる。
一般大衆は信頼に足る存在なのか。ネットの情報は,「玉石混淆だから…」とよく言われる。しかしそれも旧勢力の発想である。自然淘汰により,情報は信頼に足るものになる。また,信頼に足るものにしていける。
このような「不特定多数無限大への信頼」により,ウェブは大きく変革すると,著者は主張する。
肥大化した情報は,より必要とされるものが一層活用され,まったく必要とされないものは消えていくのだろう。また,そのようなこととは関係のない大多数は,影響力もないが無害なまま,膨大な情報の片隅に生き残る。そして,環境が大きく変わったときに,その中から選ばれたものが,また勢力を増すこともある。まさに,進化の理論のように。
このような展開は非常に興味深いものである。かつての自動車やコンピュータ,また新聞やテレビなど,さまざまな産業において,繰り返されてきたことかもしれない。
しかし,自然選択(競争原理)にまかせ,楽天的にものを見ることに,やや抵抗も感じる。それは,わたしがやや老いてきた証拠なのだろうか。
なお,大きな変革の後には,また新たな問題も生じてくるだろう。将棋の羽生善治氏の「高速道路の走り抜けた先では大渋滞が起きている」ということばは,次に乗り越えなくてはならない壁をうまく示唆しているようにも思う。