義父の他界(4)

出棺とともに皆が式場を出る。そのあと,わたしは静かに寺院控え室で寝ていた。そこに娘からの電話。入学式の会場をまちがえたらしい。大学に連絡して確認させてもまだ曖昧。とにかく正しい会場近くまで移動するように指示し,わたしが大学に連絡して会場や,参加できなかった場合も問題点などを確認する。寺院控え室が一瞬騒がしくなる。
結局,入学式には参加できなかったが,引き続き行われる簡単なガイダンスには出席できたようだ。また,入学式に参加できなくても,何らデメリットもないらしい。ひとまず安心して,12時半頃また横になる。

午後2時過ぎに,そろそろ住職が戻って来るという係の人の声で目を覚ます。座布団を片づけ,気配を消して初七日の会場へ。しばらくすると皆が帰ってくる。午後2時30分頃から,そこで初七日の法要。あれだけ眠ったのに,わたしはお経を聞きながらまた寝たり覚めたり。そして,お経のあとには長い説教。大変失礼ながら,こちらも聞き逃してしまった。
その後,皆で会食。この段取りまで,葬儀のセットだ。あまりに便利で,あまりに興ざめだ。でも,親戚が集まって,笑顔で話をしているところを見ると,しかたがないとも思えてくる。ただ,もう少し食事がうまいといいのだが。
このようなときしか,これだけが集まることはない。そのような集まりも午後4時には終わり,皆がそれぞれに席を立ち,帰りはじめる。わたしたちも帰ろう。葬儀に使った花3体をお持ち帰りくださいと。義母,義姉家族,わたしたち家族と花3体が3台のタクシーに別れて乗り,義母の家に戻る。
あわただしい3日間だった。この3日間,何のために何をしていたのだろうか。追われるままに,迫ってくるものをこなしていただけ。何だか悲しんでいる暇もない。笑顔の写真だけで,本人がいないのが不思議なくらいだ。ほんとうに亡くなってしまった。そのように意識して思わないと,後ろから声が聞こえてきそうだ。今年の正月,一緒に鍋をつつき,酒を飲んだのが思い出される。