単なる道具であるコンピュータが使えるようになったからと言って,クリエイティブな仕事ができるわけではない。最近,デザイナーとよばれる人が多くなったように思う。デザイナー定番ソフトの使い方さえマスターすれば,見栄えのよいロゴはたちどころにできてしまう。
さらに,ルール通りに紙面を組み上げるだけの操作をする人もデザイナーとよぶようになったらしい。熟練の技を生かし,読みやすい文字組をするオペレータは過去のものとなった。その代わりに,ソフトウェアのおかしな標準設定のままに妙な文字組をしても気にもせず,オプションで購入したプラグイン類を駆使して,こってりてんこ盛りの紙面をつくりあげる人をデザイナーとよぶとは,この世界も変わったものだ。
でも,わたしはコンピュータが創造的な仕事に役立たないと思っているわけではない。まったく逆の考えをもっている。そのように思い,いままでさまざまな抵抗を乗り越えて,仕事にコンピュータを取り入れてきた。コンピュータは創造ツールになる。そのように考える理由を,これから何回かに分けて書いていこうと思う。