イシクラゲ(原核生物)の観察

生物のからだは,細胞からできている。その細胞には,膜で覆われた核を持つ真核細胞と,膜で覆われた核を持たない原核細胞とがある。真核細胞でからだができている生物を真核生物,原核細胞でからだができている生物を原核生物という。たとえば,わたしたちヒトは,真核細胞でからだができている真核生物であり,大腸菌は,原核細胞でからだができている原核生物である。

現在の地球には,大気中に20%(体積比)の酸素を含む。もともとの地球の大気には酸素はほとんどなかったが,太古の地球上で,シアノバクテリア(ラン藻類)という原核生物光合成を行うことで,酸素が蓄積しはじめた。その後,光合成を行う生物が増えていき,大気上層にオゾン層ができ,太陽からの紫外線を吸収するようになる。紫外線は,DNAを破壊するため,DNAを遺伝子として持つ地球上の生物には有害であった。しかし,オゾン層によって,地表に達する紫外線が大幅に減り,生物が陸上に進出できるようになった。

このような生命の歴史は,中学校や高校の理科で学ぶ。しかし,ここで出てくるシアノバクテリア(ラン藻類)は,遠い世界の生き物のように思っていないだろうか。実は,シアノバクテリアは,結構身近にも観察することができる。

近所の河原に出かけ,枯れ草の根元をよく観察すると,わかめのようなものが発見できた。

大きさはこんな感じ。

拾ってみるとこんなふう。

このうようなものがあちこちにある。別のところはこんなふう。

これがイシクラゲで,シアノバクテリアのなかまだ。

先週に採取したまま,ティッシュペーパーにくるんで乾燥させておいた。それをきょう確認したら,こんな状態だった。

乾燥したイシクラゲを,ペトリ皿に取り,水を入れてふやかす。

やわらかくなったものから,少しだけ切り取ってスライドガラスに。

これをピンセットなどで細かくちぎってから,水を加えてカバーガラスをかける。そして顕微鏡で観察する。









窒素同化をするちょっと異質な細胞であるヘテロシストが観察できるかと思ったが,いくら探しても見当たらなかった。

400倍で観察しても,細胞(粒々の1つ)の構造まではわからない。膜を持った核がないと言われても,自分で観察できなければピンとこない。原核細胞を観察するよい素材かと思ったが,これでは意味がない。何かよい方法はないものか。

なお,イシクラゲは食材になるそうだ。でも,採取した場所などを考えると,なかなか口に入れられるものではない。さらに,観察していたら,動いているセンチュウに出会った。



これを見てしまうと,ますます食べられない。