こんな上司が部下を追いつめる

こんな上司が部下を追いつめる―産業医のファイルから (文春文庫)

こんな上司が部下を追いつめる―産業医のファイルから (文春文庫)

2009年8月9日購入
かつては,自分が苦しみ嘆いている状況だった。このような本は,部下の立場で読み,それで救われることもあった。また,いつかはよい方向に変えていけると思っていた。

でも,世の中の状況は変わっていない。身近なところでは,わたしの時代と比べたら格段によくなっていても,問題がなくなるばかりか,その幅が広がっているようにも思う。もっと複雑な様相だ。

本書に出てくる事例は,極端なようではあるが,いまでも実際にあり得ることだろう。特に,正社員ではない不安定な状況ではなおさらだろう。仕事があればよい方だという声も聞こえてきそう。

現場を知らないで指示を出す。強引にやらせようとする。そこには,組織としての問題もはらんでいる。できそうにないことを目標に掲げる。現実に目を向けようとすれば批判される。戦時中のような組織では,いつかは破綻する。

精神論ではなく,きちんと指導し,わかり合って進めていくことが理想だと思い,これまでやってきた。しかし,現実はそれほど単純ではない。なかなか伝わらないため,わかり合うと言える状態に到達できない。伝え方が悪いのかとも思ったが,伝える内容にも問題があるのかもしれない。

理屈だけでは解決できない。50を過ぎて,多少は人間味が出てきたのか,そのようにも思うようになった。理詰めで諭して,がむしゃらやって見せたところで,お互いに苦しいだけなのかもしれない。

上司から部下へという一方通行では解決はできない。部下から上司への情報も重要だ。また,部下同士のコミュニケーションが大切だと思う。上司に多くの部下がたこ足配線のようにつながっている組織では,うまくことは運ばない。

本の感想ではなく,自分自身の反省や悩み,単なるぼやきになってしまった。でも,上司・部下の別なく,考えてみることは必要だと思う。