不動産譲渡所得の税

亡くなった父の家を兄弟3人で相続した。しかし,誰も住むことがなく,古い家をそのままにしておいては,近所に迷惑がかかる。実際,雨樋がはずれて隣家に寄りかかってしまったり,ガラス戸を割って空き巣が入ったこともあった。昨年の秋からの不景気で,土地の値段が下がり,売るタイミングとしてはよくはなかったが,手入れをしたり,点検に行ったりする時間的,精神的余裕がないので,4月に近所の不動産会社を通して,土地と家を売却した。

なお,この売却では,価格に不安があり,友人の世話になった。わたしは何でも自分で仕切るタイプだが,今回はほんとうに支えられた。突然の相談にもかかわらず,親身になってくれた友人に感謝。

さて,このようにして,それほど高額ではないが所得ができた。そして,そこには税金がかかる。所得があるのだから払うのは当然。しかも,親から相続したものなら税率が高くてもしかたがない。ただ,そうは言っても,払う必要のないものまで支払うのはちょっと。そこで,この5連休に調べて試算してみた。

まずは税率。やはり高い。5年を超えて所有したものを売却した場合,所得税15%,住民税5%で,合計で20%だ。5年に満たなければさらに高く,所得税30%,住民税9%になる。ただ,譲渡所得にかかるもので,譲渡所得は,譲渡価額から,取得価額と売却経費を引いたもの。また,相続の場合,所有期間は被相続人の所有期間を含めて所有期間と見なされたり,被相続人の取得価額を引き継ぐことができる。

つまり,わたしの場合,相続してから3年ほどであるが,父である被相続人が30年ほど所有していたので,所有期間が5年を超えることになる。また,相続したのだから,取得費用はかかっていない。でも,父が買ったときの費用を計上できるのである。これを使わない手はない。父の家にあった書類の多くはシュレッダーで処理済みだったが,幸いにも,売買契約書とともに,売買の領収書や諸経費,登記費用の領収書が残っていた。

父の購入価額は,土地と建物の合計金額。建物は減価償却をしなくてはならないが,建物の価額がわからない。でも,このようなときには,「建物の標準的な建築価額表」を使って計算ができる。これには,年ごとに,1平米当たりの建築単価が記載されているので,これに家の延べ面積をかければよい。

以上のことを使って,次のように計上して計算した。

今回の譲渡価額(A):実際に売った値段

土地購入代金(B):土地と建物の購入代金ー建物の購入代金
建物の購入代金(C):建物の標準的な建築価額表の値×延べ面積
購入時の諸経費(D):不動産手数料,登記費用
建物の減価償却(E):建物の代金×0.9×償却率(木造:0.031)×年数(30年)
※ただし,この金額が建物の代金の95%以上になった場合は,建物の代金の95%を減価償却とする。

売却の諸経費(F):不動産手数料,収入印紙代など

譲渡所得=Aー(B+C+DーE+F)

この計算により,譲渡所得は,譲渡価額の1割以下になった。この計算がほんとうによいのなら,今回の所得税+住民税は10分の1になる。

やはり調べてみるものだ。国税庁がきちんとした資料をネットで公開しているので助かった。特に,平成20年分譲渡所得の申告のしかた(記載例)の(土地や建物をお売りになった場合)を参考にした。

なお,今回得た売却益は,ある目的のためにしばらく手をつけないようにする。父の残したものなので,わたしが自由にするのではなく,父がほんらいすべきことにあてるようにしたい。だからこそ,税金も必要最小限におさえたい。売却益だけで足りればよいのだが。