データの罠

データの罠―世論はこうしてつくられる (集英社新書)

データの罠―世論はこうしてつくられる (集英社新書)

統計データがあると,素直に受け入れてしまう傾向がある。でも,そのデータがどのように得られたものか,そこから考えないと,本当のことは見えてこない。

新聞やテレビで扱われるデータであっても,それがかなり怪しいものであると思ってきた。対象の選び方やその数など,はっきりしないデータは意味がない。調査方法とともに見てはじめて,そのデータの価値がはっきりするはずだ。

毎週,新聞にのる視聴率ランキングも,実は大した意味がない。都道府県ランキングも,いったいどのようにして決めたものか。そのような無意味な数値がひとり歩きして,多くの人を動かしていることの虚しさ。

全調査にあまり意味がない。これを知ることは大切だ。いま行われている学力調査は全調査。以前,文部大臣が「全調査だから確かだ」というようなことを言ったのには驚いた。調査されることがわかっているため,対策する学校や子どもが現れる。そのようなデータが混じったら,正しい調査と言えるのだろうか。

いままで統計データを鵜呑みにしていた人は,ぜひこの本を読んで欲しい。興味深い例をあげながら,わかりやすく解説してあるので,きっと役に立つだろう。

なお,中学や高校の新しいカリキュラムが発表された。数学では,統計がいままでより少し多くなったように思う。統計は必須のリテラシーとして,しっかりと学ぶようになって欲しいものだ。