ティッシュ配りにも技が

出勤時,地下鉄の入り口付近で,消費者金融のポケットティッシュを配っている。配り手は何人かいるようで,ときどき人が変わる。ティッシュ配りでも,人により要領が異なっていることに気づく。

人の流れに合わせて,スムーズに渡していく人もいれば,何となく間が悪く,ぎごちない人もいる。うまい人は,人が出す手に吸い込まれるようにティッシュを渡す。差し出すティッシュが,そこを通る人の手を引き寄せているかのようだ。ここまでいくと名人芸。

「○○でーす」というよく通るがうるさくもない声で,その先でティッシュを配っていることをアピールする。地下鉄に降りていく人たちの流れをさえぎることなく,すばやく手を動かし,次々に渡し終える。そして,くるっと振り返ったと思うと,次の瞬間には,もういくつかのティッシュを手にして,また配りはじめる。やや大げさかもしれないが,うまい人はこんな感じだ。

それに引き替え,下手くそは話にならない。人が通るのを邪魔するかのようにティッシュを出す。しかも,自分の上腕よりも大きな半径の円弧を描き,人を殴らんばかりだ。そんなに大仰な動作など無用なのに。受け取ろうにも,タイミングを合わせるのに苦労する。受け取る側に技を求めるという最悪の状態だ。

それでもポツポツと配られていき,手持ちがなくなると補給のため振り返る。それからしゃがみ込んで,大量のティッシュが入った箱に頭を突っ込み,何やらごそごそと。その場所がまた,人の通行に微妙に邪魔なのだ。わたしのような行儀の悪いものは,蹴飛ばしてしまいそう。これでは受け取ろうとするものも少なかろう。

やや誇張して書いてはいるが,おおむねこんな印象をわたしはもっている。