日本の悪い風習か

きょうの朝日新聞の朝刊に,麻生総理のことばがあった。ノーベル化学賞受賞について語ったこととして,「緑色のクラゲなんて,ちっとも内容が何のことだか,ぼくにはよくわからないけども,とにかくよかった」と。

これが,理科離れを嘆いたり,技術立国をとなえた政治家たちのトップの言葉だ。悲しい。朝刊を見ていて,ほんとうに涙が出るほど悲しかった。恥ずかしい。わたしはこの国を愛しているし,誇りに思うことも多い。でも,この言葉を知って,この国にいることが一瞬,恥ずかしく思えた。

わかろうとしていない。どうして知ろうとしないのか。わずか5分程度レクチャーを受ければ,下村さんの研究姿勢や,このタンパク質がどのように利用されているかなど,何かをつかむことができるはずだ。そんなレクチャーだったら,わたしにだってできる。わずかな情報から大切なことをしっかりつかむ。これこそリーダーの資質だ。

一般に,歴史や古典などについて語ると,教養があると思われる。物理や数学のことを語ったり,理論を説明しようとすると,理屈っぽいと敬遠されることが多いように思う。わたしは数学が苦手でした,と平気で口にする政治家や経営者。この国は,自ら論理的思考が苦手だということに寛大すぎないか。

日本の将来のため,理科離れを食い止めたいとか,理科教育を充実させようと言われている。でも,科学を理解しようという姿勢が微塵もない人のため,いったい,だれががんばるのだろうか。要領よく苦手組に潜り込んで,わたしも苦手で,と言いたくもなる。

好きな者がやればいい。おれはいやだ。誰かがやってくれるだろう。そんなことが見え隠れする社会。ほんとうに悲しくなる。文系だ理系だというくだらない枠組みに,自らをとじこめてしまうものは,真の教養人とは言えないし,リーダーとして適正を欠いていると思う。