生命進化の七つのなぞ

生命進化7つのなぞ (岩波ジュニア新書)

生命進化7つのなぞ (岩波ジュニア新書)

7つのなぞとは,
1.生命が生まれた
2.代謝がはじまった
3.光合成と化学合成がはじまった
4.原核細胞が真核化した
5.多細胞生物が現れた
6.陸上へ進出してきた
7.人類が誕生した
である。
生命の誕生,化学進化,代謝の進化などと,それらに関係して,系統,代謝酵素,DNA,タンパク質と話題は多岐にわたる。

「単純な構造のアミノ酸ほど合成されやすいため,環境に多く存在した。環境に多く存在するものは,よく使われるはず。」確かに,現在の生物を調べるとそのようになっているのはおもしろい。「ホロウィッツの代謝起原説」とともに,わたしには進化の本質を述べているように思える。

ただ,内容がやや古くなっている点は残念だ。原核細胞の真核化では,「共生説」に否定的な著者の意見が出ている。複数の説を出し,それらについての意見を述べてはいるが,ある程度受け入れられている「共生説」が,このように否定されると,想定している読者である「ジュニア」は戸惑うかもしれない。
また,植物の陸上への進出で,コケ植物が最初陸上に適応したと書かれている。しかし,シダ植物が最初であるという説もある。さらに,動物の陸上進出については,脊椎動物が中心で,昆虫類の進出には触れられていない。話を複雑にしないという配慮なのかもしれないが,「共生説」におけるこだわりとのギャップを感じるのは,わたしだけだろうか。

批判的なことを書いてしまったが,進化を通して,いろいろな生命現象から系統分類にいたるまで,幅広い内容が非常にコンパクトにまとまっているところはすばらしいと思う。上記のような疑問が出るのは,やはり10数年前の本であるので,しかたのないことかもしれない。

それだけ,生命科学の分野は,急速に進歩しているのだろう。